君に届け
「あ…っと…、」
「穂波…?」
完全に目が覚めたのかはわからないけど、意識はあるみたい…
眠たそうに目を擦り、あくびをしている池澤。
「あれ…俺、寝てた?」
「うん…」
「詩音は…?」
「あっちの部屋で寝てる。遊び過ぎて疲れたんだと思う…」
「そっか…」
一通り会話を終えると、池澤は背伸びをした。
どうやら…
完全に目が覚めたようだ。
ここからが本番。
あたしは、覚悟を決めて池澤の方を向いた。
「ん…何?」
その視線に気付いた池澤も、あたしの方を見る。
「えっと…」
あたしが今からやろうとしていることは、普通なら出来ること。
簡単なの…
だけど、あたしにとっては結構難しい─
『先生』を付けるよりも照れくさい呼び方。
葛城先生の提案は…
池澤を下の名前で呼ぶことなんだ─