君に届け
あたしは『池澤』と呼ぶことに慣れている。
今更呼び方を変えるなんて…
「あの、さぁ…」
「ん?」
言い出そうとするけど、池澤の顔を見てると余計に緊張してくる。
「葛城先生がね…」
「真先輩…?」
てか、葛城先生の名前なんて出しちゃダメじゃん…
「真先輩がどうした?まさか…口説かれたとか?」
「違うって!!あり得ないよ、そんなの…」
何か、話が変な方向に向かってるような─
「そうじゃなくて…さ、」
「………?」
池澤は訳がわからないという顔であたしを見つめる。
不器用なあたし…
こんなことも出来ない。
詩音ちゃんだって、普通に呼べてるのに…
「どうした?穂波、何か今日変だけど…」
首を傾げて、軽くあたしの頬をつねる池澤。
「何かあった…?」
「…っ。」