君に届け
優しく聞いてくれるのはいいんだけど…
「痛い…」
つねられっぱなしは、ちょっと痛かった。
「あっ…ごめん。」
慌てて手を離す池澤。
そんな姿を見て、あたしは思わず笑ってしまった─
それにつられてか、池澤も笑っていた。
久しぶりかな…
お互いに笑ったのは。
「面白っ…」
「何が?」
「だって、池…」
『池澤』と呼ぼうとした危ない所で止めた。
いつか出来る。
そうじゃなくて…
今やらなきゃ─
そう思った時、ふと池澤の髪が目に入った。
寝癖…かな?
一部だけ立ってる─
あたしは、その髪の一部に指を差して言った。
「そこ…寝癖ついてるよ。憲介─」