君に届け
葛城先生は、あたしに何かを伝えようとしてる。
声は出さずに、口パクでこう言ったように見えた。
『いけ じこ』
じこって…
【事故】のこと?
いけは…
【憲介】のことだよね─
「えっ…」
もし本当に葛城先生がそう言ったなら、憲介が事故に遭ったことになる。
嘘…だよね?
何かの間違いだよ─
「穂波…大丈夫?」
後ろの席に座る綾芽が、あたしの背中をつつく。
「先生何か言ってたように見えたけど…」
「…………」
綾芽に返事すら出来ず、あたしは呆然としていた。
「事情は後で説明する。君たちはここで待機をしていなさい…葛城先生、行きましょう。」
一條先生はそう言うと、葛城先生の腕を引っ張る。
葛城先生も呆然としていて、動揺しているのは見てわかる通りだった。
やっぱり…本当なの?
「みんな…自習してろ。」