君に届け
「大丈夫だから…」
必死に平常心を保とうとしている葛城先生。
いつもより元気のない、無理をしたような笑顔が何よりの証拠だった。
みんなもそれに気付き始め、ざわざわと騒ぎ出す。
今は真実を確かめることも、何も出来ない─
この授業が終わるまで、あと10分はある。
ただ待つだけ─
「穂波…?」
あたしを心配してか、綾芽が席を立ち、あたしの横にしゃがみ込んだ。
「先生、穂波に言ったんだよね。何か…あった?」
綾芽…
あたしは力なく綾芽の方を向く。
「どうしたの?」
「憲介が…」
「えっ…憲介って─」
「事故に…遭った。」
あたしの言葉を聞き、綾芽は口元を手で押さえた。
「嘘…何かの間違いだよ。穂波、携帯出して!」
「えっ…」
「連絡するの!!」
綾芽はそう言って、あたしの鞄を勝手に開けた。