君に届け
携帯を見つけた綾芽は、素早く電話をかける。
「繋がんない…何で?」
「綾芽…」
焦る綾芽を見て、あたしは携帯を持つ綾芽の右手首を握った。
「大丈夫だよ。」
どうして自分がこんなに落ち着けてるのかは、よくわからない。
だけど…
「大丈夫…憲介は絶対、無事に帰って来るよ。」
「そんなっ…」
「あたし…信じてるから。」
泣きそうになっている綾芽の肩を持ち、あたしは精一杯の笑顔を向けた。
ここであたしが泣き喚いたり、焦ったりしても無駄だから…
あたしは信じる。
「幸村!」
そんな時、さっき一條先生とどこかへ行ったはずの葛城先生が教室の後ろのドアから姿を現した。