君に届け



考えてもないことだった。



義務教育時代、あたしは誰とも話す必要がないと思っていて…



学校をサボることはよくあるし、唯一の話が出来る人といえば…



あの、他校の不良、侑隼【ユウト】だけ─



高校入学を考えてからは、侑隼とも話さなくなったけど…



そんなあたしに、友達と言える人はいなかった。



いや、作ろうともしてなかったんだ…



「ねぇ?」



「あっ…なに?」



考え事をしてたせいで、矢野さんの呼び掛けを無視していた─



「友達だから…下の名前で呼んでいい?私のことも綾芽でいいから…」



下の名前…?



侑隼とはそれ相応の関係だったし、下の名前で呼んでたけど…



女子は初めて…



「いいよ…綾芽。」







< 26 / 282 >

この作品をシェア

pagetop