君に届け
ただ下を向き、自分のスカートをぎゅっと握りしめた。
何も出来ない…
あたしは、何も…
それから数分後、車は病院に到着した。
車を降り、あたしと葛城先生は走って病院内へ。
「真、穂波ちゃん…」
看護師さんに手術中だと聞いて、手術室の前に行くと、そこには志帆さんが座っていた。
「志帆…」
「…大丈夫。憲介はあぁ見えて強いんだから─」
涙を拭いながらそう言う志帆さんは、無理に笑った。
「穂波ちゃん…」
呼ばれて志帆さんに近付くと、そっと抱きしめられた。
「ごめんね…」
何で志帆さんが謝るの?
志帆さんは悪くない。
そう思うけど、あたしはそのまま立ち尽くした。
『手術中』のランプが赤く光っている。
その赤い色を、あたしはじっと見つめてた。