君に届け
それから、あたしたちの間でろくな会話はなかった。
あたしと志帆さんは手術室の前にある椅子に座り、葛城先生は立ったまま。
でも、3人とも思っていることは同じ。
憲介が
無事に帰って来ること。
ただそれだけを祈って時間を過ごしていた─
どれだけ待ったか…
しばらくして、手術中の赤いランプが消え、ドアが開いた。
「…………」
中から出て来たのは、前に侑隼の件で病院に来た時に出会った葛城先生の弟。
涼哉さんだった─
「涼哉…イケは?」
一番最初に口を開いたのは、葛城先生だった。
尋ねられた涼哉さんは、視線を床に落とした。
「兄貴、憲兄ぃは…」
「………。」
涼哉さん…
言ってよ。
無事だよって。
生きてるよって─
そう願いながら、あたしは涼哉さんの返答を待った。
すると…
「一命はとりとめた…」