君に届け



「「えっ…?」」



あたしと葛城先生は、同時にびっくりして憲介の側に駆け寄った。



顔を覗き込んでみる。



「イケ?」
「憲介?」



呼びかけてみると、また指が動いた。



「憲介、わかる?」



あたしはその手を握り、憲介に声をかける。



お願い…
目、覚まして─



そう願っていると、憲介の手は、ゆっくりだけどあたしの手を握り返してきた。



「……!!」



そして、目を開けた─



葛城先生が冗談でやったデコピン攻撃が効いた…



「嘘…だろ?」



本人も信じられないという顔で憲介を見る。



でも…
意識が戻っただけで、安心するのはまだ早い。



後遺症の心配…
手術をした人が言ったこと─



あたしは覚悟を決めて、憲介に聞いてみた。



「あたしが誰か…わかる?」





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