君に届け
そう聞いた後、憲介はこっちを見てゆっくり2回瞬きをした。
覚えてるよね…?
後遺症なんてない。
信じて、いいよね…?
「……ほ、…な……み?」
酸素マスクのせいで声はこもってたけど、ちゃんと聞こえた。
『穂波』って言った─
「あ…俺、涼哉呼んでくる。」
葛城先生が走って部屋を出て行った後、堰を切ったように溢れ出す涙。
「よかった…本当にっ、本当に…よかった。」
あたしはそのまま、葛城先生と涼哉さんが来るまで泣き続けた。
やっぱり信じてた通り、憲介は戻って来た。
あたしのことを覚えてるってことは、後遺症の心配はなさそうだし─
本当に…よかった。