君に届け
「……?」
触れられた池澤は、キョトンとしている。
張本人のあたしも何がしたかったのかわからなくて、曖昧に笑った。
「なんだよ…?」
「別に。ただ、触ってみたくなっただけ!」
あたしは指を離し、池澤に背を向けた。
「幸村…」
無視する。
今になって、さっき自分のしたことが恥ずかしくなったんだ…
「幸村…?」
無視。
「…はぁ…」
池澤はため息をついて、少しの間口を閉じた。
そして、背を向けているあたしの頭に手を乗せた。
「幸村、ありがと…」
えっ?
お礼を言われ、思わず池澤の方を振り返る。
見ると池澤は─
あたしに笑いかけていた。