君に届け
葛城先生が教室から出て行くのを見て、後を追いかける。
微妙な距離感を保ちながら歩を進めていく。
着いた先は、教室がある校舎とは別の校舎にある多目的室。
人の気配は…
今のところない。
「先生…何の話ですか?」
多目的室に2人きりのあたしと葛城先生─
「お前…さ、イケと仲良さそうだけど、付き合ってるとか?」
いつもよりも低い声であたしを見つめながら言う葛城先生。
なに…?
「あり得ません。池澤先生とは少し話すくらいの仲ですから…」
これは嘘になるのかな…
「そうなんだ…」
あたしは見逃さなかった。
葛城先生がほんの少しだけど、笑った─
勝ち誇ったというか、何かを企んでるような笑み…
ヤバいかも…
近付く葛城先生を離す為、後ろに下がるあたし。
「─っ!」
あたしの背中、すぐ後ろには掃除用具入れ。
もう後ろがない…
─バン!!