君に届け
5.過去と今
あたしは、葛城先生が出ていったドアから池澤へと視線を変える。
心ここにあらずと言ったら見事に当てはまるような感じの池澤。
どうしよう…
「池澤…?」
とりあえず声をかけてみる。
反応はなし…
「池澤先生…?」
前みたいに『先生』を付ければ反応してくれるかなと思って、また声をかける。
「幸村…」
すると、小さな声だけど返事が帰ってきた。
「大丈夫…?」
「俺…誤解してた。先輩が悪い人だって思って、お前にもそんなこと言って…」
「別に…」
もう誤解は解けた。
これからまた、葛城先生と仲良くやっていけば問題はないし…
「それに…俺のせいで愛奈が苦しい思いをしてたなんて…」
「アンタが悪い訳じゃないよ。愛奈さんだってきっと、そう思ってるはず…」
確信はないけど…