君に届け



幸村の言う通り、俺の力不足だった。



俺が…
俺が悪いんだ…



愛奈、ごめんな…



静かな多目的室。
部屋に入ってくる人はおろか、廊下を通る人もいない。



そんな静まりかえった空気の中、俺は1人、愛奈を想う。



届くはずがない。
そんなこと、わかりきっているのに…



忘れたはずなのに…



なんで涙が出る?



こんな俺を見たら、愛奈は笑うか…?



『この泣き虫憲介!』って怒鳴るか…?



思い出す。
愛奈の笑顔を。



俺と愛奈と先輩…
みんなで過ごした、楽しかった思い出を─



「愛奈…」



会いたいよ…
一度でいいから─



愛奈…






< 59 / 282 >

この作品をシェア

pagetop