君に届け
多目的室は、さっきと同じように静まりかえっている。
俺はドアに手をかけ、ゆっくりと開けた─
「…イケ。」
俺の目の前には、窓の外を見つめるイケがいた。
イケは呼ばれて振り返ったが、また視線を戻してこう言った。
「先輩…俺、愛奈に悪いことした…」
「違う。お前は悪くないんだ。悪いのは、ずっと隠してた俺だ…あの時も何も言わなくて、お前を誤解させたし…」
幸村の言う通り、相当自分を責めてるみたいだ…
俺は必死に宥める。
「愛奈はお前のことを話す時、すごい幸せそうだった…まるで、自分のことのように笑って話すんだ。
だから、今のお前を愛奈が見たら、悲しむぞ…?」
こいつもわかってるはずなんだ。
愛奈はもういない。
後悔したって、想ったって届かない─
だって、イケが俺に教えてくれたんだから…