君に届け
それから約8時間後─
全ての授業を終え、綾芽からの帰りの誘いを断り、あたしはいた。
理科準備室の前…
ここは、教室からかなり離れた距離にあって、昨日来た多目的室を通り過ぎた更に向こう。
疲れた…
ちなみに、まだ池澤は来ていない。
ドアを開けようとしたけど開かず、仕方なく前で突っ立ってるんだ─
「幸村!!」
聞き慣れた声と共に、こっちへ走ってくる足音。
「遅い…」
「ごめん…部活の生徒に絡まれちゃって…」
「部活?」
初めて聞いた。
部活って、池澤はどっかの顧問だったかな…?
「あぁ…ソフトボール。俺、ソフトの副顧問なんだ。」
「ふ〜ん…」
講師でも部活の顧問は出来るんだ…
そんなことを思ってるうちに、池澤は理科準備室のドアを持っていた鍵で開けた。
「どうぞ♪」
入れってことか…
あたしは、池澤が開けたドアから準備室に入った。