君に届け
一旦池澤と別れ、1人で駐車場まで歩く。
迷いはない。
むしろ、あの人に対する嫌悪感の方が大きい。
あたしからお父さんを奪ったあの人を─
あたしは許せない。
あの人が自分のお母さんだなんて、思いたくもない…
それくらいにあたしはあの人が嫌いなんだ…
池澤のおかげで少しは治ったけど、あたしが人を信じられないのもそのせい。
みんながあの人みたいな卑劣な人間に見える…
「幸村?」
「え…」
「大丈夫か?ボーッとしてるけど…」
「うん…大丈夫。」
「そうか…じゃ、帰るか。俺の車あれだから。」
池澤が指差す方向を見ると、意外と大きな車がそこにあった。