君に届け
「幸村…」
「ん?」
車に乗り、池澤の家に向かう途中に池澤があたしに話しかけた。
「お前…さ、お母さんのこと嫌いって言ったよな?」
「うん…大嫌い。」
「…本当か?」
わかりきった質問をする池澤に、あたしは疑問を持ちながらも頷いた。
さっきからずっと嫌いだって言ってるじゃん…
「あたしの前でも平気で男と一緒にいたり…再婚だってしたことあった。
あたしにとって、お父さんは1人だけなのに…
無神経過ぎるよ…」
丁度あたしが言い終わった辺りで車が赤信号で停車する。
無言であたしの言葉を聞いていた池澤が、小さなため息を漏らして言った。
「無神経か…
でもさ、お前にとってお父さんが1人なように、お母さんも1人しかいないじゃんか…
そうだろ?」