君に届け
あたしにはその言葉が2つの意味があるように感じた。
あたしに対しての忠告。
それはもちろん、本来の意味だろう。
それとは別に、池澤自身が経験したことに対する意味があると思う。
愛奈さん…
あたしの頭に浮かぶ、池澤が好きだった人。
だったはおかしいかな…
今でも好きなのかも知れないしね…
前に進んだとは言え、池澤が愛奈さんのことを忘れるはずはない。
だからあんな言葉をあたしに言ったんだ…
自分のように、その人がいなくなってから後悔したって遅いんだ…と。
遠回しだけど、あたしにあの人と向き合えって言ってるのかな…?
「池澤…あたしはね、まだあの人と向き合う勇気はない。」
池澤は無言で、あたしの方を見ることもなく、エレベーターの扉を見つめたまま。
聞いてるはず。
そう思い、あたしは続けた。