君に届け
「でも…さ、池澤が言ってることはわかるよ。」
「………」
尚も無言を貫き通す池澤に、あたしはさらに続ける。
「いつになるかわかんない。けど、いつか必ずあの人と向き合ってみる…」
あたしは、池澤に出逢って全てが変わった。
口では言わないけど、結構感謝してんだよ…?
あたしは不器用だから…
言えないけど。
「お前なら出来る。数学にも向き合えたしな…」
やっと池澤が言葉を発した時、エレベーターが7階に到着した。
「幸村、数学ってな、諦めずに頑張れば答えは必ず出るんだよ。まぁ、例外もなくはないけど…」
エレベーターを降りて、池澤は言う。
「いつかお前にも、本当の気持ちと答えがわかる時が来るはずだ。今日は泊めてやるけど、もう次はないぞ。」