君に届け
「うん…」
返事をして、あたしもエレベーターから降りる。
「俺の部屋、本当に汚いからな!」
「そんなに…?じゃあ、あたしが掃除しよっか?」
部屋の前まで来て、鍵を開けようとしていた池澤にそう言うと、池澤の手がピタッと止まる。
「…え?」
池澤は訳がわからないと言いたげな表情。
「あたしは家事いつもやってるから慣れてるし。それに、アンタには借りがあるから返さないと…」
色んなことを教えてくれた池澤に何かしたい。
そう思って言った。
「借りって…俺、お前に礼されるようなことしたっけ?」
池澤はそう言いながら、止まってた手を再び動かしてドアに鍵を差し込む。
「俺、そんなことした覚えないけどな…お前に対してやったことって、当たり前のことだろ?」