ハイスクールラブ
「いいねーいいねー。どんどんあいつを困らせてやって。でも、今日はあいつ、熱出して倒れてんだよ。あ、知ってた?それで看病に来ました、みたいな??」
「そうです。でも、家がわからなくて。重田さん知ってますか!?」

真奈美は勢いよく尋ねた。

「いいね~若いっていいね~。あ、僕のことはしげちゃんって呼んでね♪あ、敬語もやめてね♪♪」

にっこり笑って言った。
右手に持っていたビニールの袋を軽く持ち上げた。

「これね、紘季に頼まれて。今から紘季んとこ行くつもりだったんだ。一緒に行く?」

真奈美は元気よくハイ!と答えた。

「いや~まさか高校生とこうやって歩けるとは思ってなかったから、僕ぁ、嬉しいなぁ~」

重田はドレッドに手の甲までの刺青といった風貌だったが、とても優しく笑い、話し方も親しみをわかせた。
真奈美は言われた通り敬語を使うのをやめ、緊張を解いて話した。

「しげちゃんは、藤くんとはいつから友達なの?」
「"藤くん"とはねー、中学生からのお友達。なんかさ、あの人、イケメンじゃん?僕は最初『気にいらねー野郎だ』と思ってたわけ。でもさ、あいつスゲー馬鹿なの。分数よくわかんねーっつって。教えてっつって。んで、僕が教えてあげたのだよ。それで仲良くなったんだなぁ。」
「へー?それなのに数学の先生になったんだ。」

真奈美は紘季の過去が聞けて嬉しかった。

「あー、この話、オフレコね。"藤くん"怒るから。僕が分数教えたとか言うと。」

重田はてへへと笑った。

話していると見覚えのある路地に出てきた。

「あ!思い出した!ここかー。なんだ、全然違うとこ歩いてたや。」

真奈美は今度は忘れないぞと歩いてきた道を頭に入れた。

「来たことあるんだ。紘季んち。」

重田がにやにやと笑う。
真奈美は少し照れて頷いた。
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