ハイスクールラブ

「紘季は真奈美ちゃんのこと、好きなの?」

真奈美はドキっとした。

「・・・それ、一番知りたいの私だと思う。しげちゃん、何か聞いてない?」

重田はうーんと、顎の髭を撫でた。

「聞いてないねえ。あの人、あまり女子の話しないのよ。特定の人好きになることってないんじゃねーかなと思う。だから、俺も知らないの。いろんなコと遊んでんのは知って・・・あ、ごめん」

ううん、と真奈美は平気なフリをしたが、正直ショックだった。やはり自分だけじゃなかったのだ。

「真奈美ちゃんは、本気なんだ」

重田が鍵を取り出した。合鍵を持っているらしかった。玄関のオートロックの扉を開けた。

「本気も本気!もう、朝から晩まで、一日中、ずーっと藤くんのことばかり考えてる!」
真奈美は意気込んで言った。

「ハハハ!俺にアピってどーすんの。・・・そっかー。本気か。大事だねえ。その気持ち。」

真奈美はなんとなく馬鹿にされたような気がした。
大人たちにしてみたら、高校生の本気なんてオママゴトと同列なのだ。
エレベーターに乗り込む。

「しげちゃん」

ん?と重田が真奈美を覗き込む。

「藤くんやしげちゃんにしてみたら、私って、やっぱり子供?」

重田は、あー・・・と少し困ったような声を出した。

「そうねえ・・・子供と言えば子供だし・・・。でも、自分が高校生の頃のこと思い出してみると、今と大して変ってない気もするし・・・。難しいとこだねえ。」

そう言って答えを濁した。

「私・・・いろいろ考えたの。本当にいろいろ。でも、どっからどう考えても、藤くんが好きなの。本気なの。」

真奈美は真剣に言った。
重田はじっと真奈美を見た。
エレベーターが到着する。
二人で無言で降りる。

紘季の部屋の鍵をがちゃりと開けて止まった。

「・・・真奈美ちゃんだけで、行って。俺は・・・いいや。」
「え?」

重田が真奈美に袋を渡した。
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