ハイスクールラブ

「薬とポカリが入ってる。あと、鍋焼きうどん。やっぱり、風邪の時は鍋焼きうどんでしょ。」

そう言って、帰ろうとした。

「待って、しげちゃん!どうしたの?私、何か気にさわること言った?」

重田はいやいやと手を振った。

「真奈美ちゃんの"本気"に胸打たれたのだよ。二人っきりにしたげるよ。頑張って!」

じゃね!と言ってエレベーターに乗ってしまった。
真奈美は言葉を失った。

(しげちゃん・・・気を使ってくれたんだ。いい人・・・。)



真奈美は途端に胸がドキドキしてきた。
紘季の部屋に入るのは何ヶ月ぶりだろう。
静かにドアを開けて入る。

廊下の正面に再び扉が見える。
咳がゴホゴホと聞こえた。
扉を開ける。ベットに倒れこんでいる紘季が見える。
真奈美は怒られるかも知れないと思う気持ちと、再びここに来られた嬉しい気持ちが混ざり合い、苦しくて胸を押さえた。

「・・・・しげ?」

紘季が咳をしながら聞く。
真奈美は無言で紘季に近づいた。
紘季が布団の中から顔を出す。
真奈美を見上げて、目をむいて驚き、跳ね起きた。

「ぐ・・・」

ゴホゴホゴホッ!と咳き込む。
真奈美が慌てて駆け寄った。

「起き上がったりしたらダメだよ」

紘季は咳き込み始めると止まらないようで、苦しそうに体を捻った。

「なんで・・・広瀬が・・・」

やっとの思いでそう言ったが、目はぎゅっと瞑り、辛そうだった。
熱のせいか、額が汗ばんでいる。

「外でしげちゃんに会ったんだよ。しげちゃんはそこまで来て急に帰っちゃった。」

紘季は、バカしげ・・・と呟き、再び布団の中にもぐってしまった。

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