*torn
 相変わらず、雨粒は落ちてくるし。グレーの色は、さっきより、濃くなってるようだし。
 まるで、彼の周りだけ、降っていないかのように。
 そう、彼の周りの空気が、彼を護っているかのように……。
 はっとして、思わず、足下を緩めそうになって。
 慌てて、ブレーキをぎゅっと踏み直す。

 彼の周りの空気。
 それだけが、違っていた……。
 それって、
 どこかで、
 どこかで、見た、光景のような気がする。
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