あたしは胸のドキドキに耐えられなくなって目をギュッと瞑った。



「ここじゃなくてもいい?」



先生があたしの腕を掴んだまま聞く。



「えっ?」



あたしは目をパッと開けた。



「ここ、教職員用の駐車場だろ?まだ来てない先生も多い。邪魔になるかもしれないから学習室で教えてやるよ」



「あっ、はい!」



先生は優しくあたしに微笑み、あたしの腕をパッと放して、校舎に向かって歩き出した。



ボーッと先生の後ろ姿を眺めながら、かっこいいって思ってしまう自分がいた。



わからないところがあるなんて嘘だもん。



好きな人が受け持つ授業だよ?



嫌いなわけないじゃん・・・。



今日だって部活がないのに、HRが始まる2時間前に来たのだって先生に会いたかったからだよ。



先生が好きだからだよ?



大声で叫んじゃいたい。



“あたしは先生のことが好きです”って。



「おい、何してんだ?置いてくぞ」



先生が不意に振り返って言った。



「あっ、待ってくださいよぉ!」



そう言って、あたしは先生を追いかけた。
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