僕の中の十字架






野田さんは、放課後直ぐに先生に連れて行かれた。
ぼく達は、野田さんが何を描いたのか、何故先生が怒ったのか、全く分からなかった。

それからどういけばそうなるのか、先生が野田さんをいじめてる、という噂が産まれた。


悪い噂は仲間うち、つまりはぼくのクラスの皆の中でだけ盛り上がった。他のクラスの子にとって、「優しい先生」で、先生がそんな子供じみたことをするような人なわけない、と信じて貰えないのは目に見えていたからだ。

ぼくは全く有り得ないと思った。見たことだけで先生を悪者扱いは出来ない。




放課後、ぼくとサエは図書室に居た。ぼくは図書委員だからで、サエはただ入り浸ってるだけだ。


「ね、クロは先生がそんなことすると思う?」

「解んない。見たことだけなら確かにそれっぽくは見えたけど、全部は知らないから」


ぼくは、返却ボックスの中の本を一冊一冊、バーコードで読み取りながら言った。



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