僕の中の十字架


病院の白いベットの白いシーツ。


そこにべっとりと紅いものが染み込んでいる。

紛れもなく、血液である。



血液はシーツだけではなく、今もリノリウムの床の上で、明かりを紅く映している。


ほんの二十分程前に夫人はベットの上で、ご主人は床に倒れているのを看護師が発見した。


二人とも首を切られており、スッパリと顎動脈を切断されてた。


凶器はメスで、血の海の中に落ちていた。



「…………」



今回の事件も、度重なる連続殺人事件と関係あるのかというと、―――多分ある。

直感だけども。


とりあえず共通するのは、凶器が現場に残されている事と、凶器からの指紋が判別しにくいか拭き取られている事。


椅子、包丁、青酸カリ、ハサミ、メス。


殺し方は、何も考えてない様で、相当賢い。


慣れてるのか、もしくはそれなりの知識がある人間――。


他にも共通点は――――?



床に広がる紅い血を見ながら、頭の中の薄いもやをかきわけていく。

何か忘れてる気がする。何だろうか。



「順子さん」


「うるせえ」



深くなってく思考の動きを富士原に止められた。どうしよう、めっさ邪魔しい。



「ボク、思うけど、コレはなんか異常じゃない?」


「今に始まった事じゃないだろ」


「そうだけど、精神異常者?みたいな」


「何が言いたいの」


「確か、クロエ君のお父さんて、神経外科医だったよね? それって、精神科医と一緒だよね?」


「…………宮崎医師の部屋、まだあるかしら」




アホでもたまには役に立つ。










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