僕の中の十字架
「口に出してくれなきゃ、解んないよ。そうやってムッスーとしてたまに口開いたら“あーあんたは不良品、産まなきゃ良かった死ねよクソガキ”って、てめぇざけんなよこの根性曲がりが!! 何か言えやババア!」
突然の激昂。
涙と鼻水を出しながら歯をむきだしている。
「「…………」」
声をかけたくてもかけられない、カオスな気分でその様子を見守る北村と富士原。
喋ってるうちに感情が混乱したのか、ただ単に感情が刷り変わっただけなのか。
どちらにせよ今のサエにかける言葉が無いのは確かである。
特に富士原なんかが声をかけたら「黙れ! そこのマゾ娘に言葉攻めでもしてろ!」と言われて二人して膝から崩れ落ちてしまうだろう。
それに、何やら唸りながら髪をひっかき回してバタバタ暴れるサエに、近寄りたくない。
「サエ?」
「んぅ!?」
ドアのガラスの向こうの人影が、小さな人影が、ゆっくりと立ち上がった。
サエが動きを止め、
「クるぉ!?」
「うん」
サエはすりガラスの向こうの、クロエの人影に話しかけた。
「クロ、生きてる?」
「生きてるよ。――サエ」
「ん?」
「誰かが居たら、誰か、死ぬと思う?」
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