僕の中の十字架
「“日本の城”は昼休み読んでたね、出して」
「……はい」
「今チラッと見えた本も」
「……はい」
「で、手提げの二冊分の本の膨らみは?」
「……はい」
「あと一冊は?」
「………家」
「明日持って来いよ」
「……はい」
「そんなに歴史好きなんか?」
「……はい」
「買えばええやん」
「……買って」
「奢らせる気か」
「うん」
「やだ」
「買えって」
「やだって」
「ケチ」
「黙れ」
返却完了した本をカートに乗せ、本棚に戻す為にカウンターから出る。その時もサエがついてきた。
「ね、やっぱりイジメかな」
「さぁね。っていうか手伝え」
「はいはい、分かりましたよお奉行様」
「…………誰だよ」
「………お前だよ」
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