僕の中の十字架
「サエは………」
「今、救急車を呼びに行かせた」
「ぼくの事は―――?」
「別に怒ってなかったよ」
「本当に?」
「本当に」
「でも、ぼく………」
なんでおばさんを殺したのかな?
サエに辛く当たるのは許せなかった。
母親失格だと思った。
おばさんのせいで、サエが一人で泣く事を考えると胸が締め付けられた。
でも、一番変なのは、今日、ぼくの今までの記憶が一切無い事。
だからこそ自分が信じられない。
「どうしたの、クロエ君」
北村さんの顔が見れなかった。
苦しくなって、血だらけの両手で顔を隠した。
これからどうなるのだろうか。
どこか、犯罪を犯した子供達の施設にでも入れられるのか?
そしたらサエはどうなる?
また一人か?
いや、まだおじさんが居る。
でも、ぼくは近くに居られなくなる。
どうすればいい?
「クロエ君?」
そうだ。
“僕”が殺しちゃえばいいんだね?
ここにいる北村さんと富士原さんを殺して、死体を細かく刻もう。
庭の土の中に埋めて、その上から植物でも植えよう。
少なくても、3、4年、バレなければその植物が無かった事にしてくれる。
丈夫な植物にしよう。
トウモロコシなんかは?
映画であったなぁ、そういうの。
あははは。
「――――あのっ」
顔を上げて北村さんを見上げた。
そして、息を飲んだ。
北村さんの後ろに、包丁を振り上げるサエが居た。
「僕の中の十字架」壱 了