僕の中の十字架

「でもさ、もし野田さんが先生からイジメられてたら、やっぱアレ?平成教育委員会」

「だろうな。―――っていうか“平成”要らねぇよ」


ぼくは窓際の本棚に二冊戻した。


「でもさ、違ってたらどうよ」

「うー?」


もしもだ。野田さんが描いた絵に問題があったのかも知れない。それなら怒る理由は解る。

どっちにしろ、先生が野田さんをイジメてる、ってのも仮定の話だし。


「見たことだけで都合良く解釈したら、事実が歪曲されるだろ? 先生が意味もなく児童をイジメるなんて、考えらんねぇし」

「……むかつくなー、クロ」

「は?」

「いつの間にか一人だけ大人になっちまいやがって!二人で無邪気に笑いあってた時のお前は一体何処に………!!」

「もっかい言うよ、“は?”」

「でもさ、先生だって人間やん。なんか知らんが無性に意味なく嫌うことだってあるし。先生も野田さんに対してそうだったかも知れないよ」

「…………」


お前こそいつの間にか一人だけ大人になりやがって。っていうかお前本当に小五か?

頭の中も、あと朝の――――……。


…………。


「クロ、白目かなり怖い」

「あ、すまん」








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