僕の中の十字架
「……サエ………?」
クロエの声がしました。
「………なんで居るの?」
「なんでって、十分以上待たされたから、何かあったのかなって」
っつぅか、待ち惚けは嫌なんですよね。
足音が階段を降り、やがてサエの視界にクロエが現れました。
目を見開いて、かなりキョドってます。
「どうしたの?」
「いや、あの、凄い事にっていうか」
目をキョロキョロと泳がせ、そして、
「あ………」
最初はじわじわと湿気を帯び、やがてポロポロと雫が頬を伝っていきます。
クロエは泣いていました。
「………な、何?ななな何で泣いてんの?」
「………サエ」
だんだんと表情にも変化が現れ、クロエは一歩二歩とサエに近付きました。
サエも靴を脱ぎ、クロエに手を伸ばしながら歩み寄りました。
「父さんが………」
「ん?おじさんが、どうしたの?」
「……………っ」
殆んど崩れる様にして、クロエはサエの腕の中に収まりました。二人して座り込み、片方は声に出せない叫びを声に出そうと、してましたが、涙で押し潰されました。
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