僕の中の十字架

「……サエ………?」


クロエの声がしました。


「………なんで居るの?」

「なんでって、十分以上待たされたから、何かあったのかなって」


っつぅか、待ち惚けは嫌なんですよね。

足音が階段を降り、やがてサエの視界にクロエが現れました。

目を見開いて、かなりキョドってます。


「どうしたの?」

「いや、あの、凄い事にっていうか」


目をキョロキョロと泳がせ、そして、


「あ………」


最初はじわじわと湿気を帯び、やがてポロポロと雫が頬を伝っていきます。

クロエは泣いていました。


「………な、何?ななな何で泣いてんの?」

「………サエ」


だんだんと表情にも変化が現れ、クロエは一歩二歩とサエに近付きました。

サエも靴を脱ぎ、クロエに手を伸ばしながら歩み寄りました。


「父さんが………」

「ん?おじさんが、どうしたの?」

「……………っ」


殆んど崩れる様にして、クロエはサエの腕の中に収まりました。二人して座り込み、片方は声に出せない叫びを声に出そうと、してましたが、涙で押し潰されました。



.
< 31 / 133 >

この作品をシェア

pagetop