僕の中の十字架
色々と考えていたが、ふと床に座って泣くサエの姿が目に入った。
左に座って、サエの頭をぽんぽん叩くと、サエは涙で濡れた顔をぼくに向け、不思議そうにぼくを見た。
「なに?」
「クロ、何ともないわけ?」
「何ともないよ」
自分でも信じられないくらい落ち着いていた。
優しく微笑むことだってできた。
「さっき、あんな馬鹿面で『お父ちゃんが死んだー、うえ〜ん』って―――」
「言ってないよな」
サエも、涙を流しながらも、頭の中では諄諄と色んな出来事を整理している様だった。
子供で良かった、と心底思えた。
どんなことも、“すごく大きなこと”と“すごく小さなこと”でしか分けられないから。
大人になれば、アホらしくて笑ってしまう様なものが大きくて、大人になれば、辛すぎて涙してしまうことが小さい。
細かく分けるよりは、断然良い。
そして、子供は残酷だ。
大人よりも不条理を簡単に忘れられる。
実際は、一番残酷なのは、大人や子供ではなく、只の人間だ。
だって、自分で自分の首を絞めてるのに、全く気付かないから。
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