僕の中の十字架
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母さんは頭を椅子で強打されて脳そのものが挫滅していて、死因としては十分だった。
だが、更に背中から脇腹を刺され、刃を回転させ、肝臓、脾臓、腎臓を完全に破壊され、血が止まらなくて失血死した。
父さんは腹に包丁を刺し、二回転させて絶命した。他殺とは考えられなくて、自分で刺した様にしか見えなかった。
寝室のベッドの下に、血まみれのパジャマがあったそうだ。柄はパンダ。
ということは、父さんが母さんを殺して、二階の寝室で着替えて自殺した、ということになる。
死亡推定時刻は午前七時半から八時半までの間。つまり、ぼくが登校した後だった。
ぼくは一人残され、親戚にも会ったことすら無かったので、必然的に隣の幼馴染みの家に引き取られることになった。
親友の息子というだけあって、サエの御両親は快くぼくを迎え入れてくれた。
それから一週間、ぼくは塞ぎこんだ。学校も休んだ。葬式とかもしたのかもしれない。
人が死ぬというのは、他人事のように思える。
大切な人が殺されたり、自殺したりというのは、ぼくは今までずっとテレビの向こう側の話だと思っていた。
不思議だった。
全然悲しくならない。
父さんの死体を目の前にしたときは、ただ恐くてしょうがなかった。
嘘だと思いたかった。
嘘だとは思えなかった。
だって嘘じゃなかった。
本当に、父さんは母さんを殺したのかな。
それに
一週間後に知ったことだが、野田さんが死んだという。
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