僕の中の十字架
月曜日。
ぼくは隣の席の上に置いてある花瓶を眺めていた。
野田さんが死んだ。
野田さんは血圧が低く、医者にかかる程だった。
医者から貰った薬は少し強力な、処方箋がないと手に入らない代物だった。その薬を朝と昼に飲用していた。
何故か、その中に“青酸カリ”が混じっていた、というのがクラス内での噂だった。
“青酸カリで死んだ”としか聞いてなかったらしいので、かなり強引な説だった。
何故、こういう災いは感染してしまうのだろうか。
『あのさ、宮崎君。あの、私の……』
『野田さんの、何?』
まだ答えも聞いてなかったのに。
先生は先週の金曜日から体調を崩しているそうだ。
そりゃそうだ。なんか、自分のクラスだけ呪われているみたいだし。
よく解らんが、大人というのは、大変なことがあれば、何でも勝手に背負い込んでしまうようだ。
ぼくの両親と野田さんの死は、全て先生のせいじゃないのに (まあ、野田さんをいじめてた、という噂が本当なら話は別だが、信憑性は無いに等しい)。
それとも、“責任を感じて体を崩してしまう繊細な人”というポーズをとってるのか。
そういう人を装って、自分の心を守っているのかも知れない。
人間の心なんて、百人いれば百通りのパターンがある。真理は同じでも、皆少しずつ考えが違うものだ。―――ぼくは先生とクラスメイト達の考えが全く解らない。
何故、全く彼らには関係ない事なのに、色々と知りたがるんだろう。
ぼくは、もう関わりたくなかったのに。
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