僕の中の十字架

―――
――――――
―――――――――



「野田小夜子さんは鉄欠性貧血で、毎食後に服用する薬と、朝と夜に服用する薬の二種類を貰ってたみたいです」

「で? どうやったら青酸カリを飲むことになったんですか」

「そのことですが、医者から渡された薬の中に紛れていたのではと思われましたが―――」

「“思われましたが”、何ですか」

「野田小夜子さんは、学校に魔法瓶の水筒を持って行ってました。その中に」

「ん?」

「どうしましたか」

「何で、学校に持ってったものを、次の日の朝に?」

「それですが、夜の分は食後すぐに二つとも服用するのですが、朝の分は起きて朝食を食べる三十分以上前に飲む必要があるそうなので―――」

「なるほど、続けてください」

「お母様の話では、水筒の中身は毎朝登校前に入れ替えます。中がまだ残っているときは、枕元に置いて、朝起きてそれで薬を飲むそうです」

「ケチなこと。―――母親が入れた可能性は?」

「皆無かと。只今体を崩して入院してます」

「と、いうことは、学校で何者かが入れたか、自分で入れたか………」

「後者は無いと思われます。野田小夜子さんはパソコンも携帯電話も持ってないので……」

「自殺サイト等を見るきっかけすら無いですよね」

「はい」

「………」

「野田小夜子さんのお母様は何処の病院に居ますか」



.
< 39 / 133 >

この作品をシェア

pagetop