僕の中の十字架
「あのですね、彼女は今とても―――」

「ああ、違います。別に押し掛けて話聞きに行くとかじゃありません。ただ、病院の名前を知りたいだけです」

「そうですか………」

「何ですかその目は」

「だって………」

「ああもうまたソレですか!!」

「……貴女が“邪魔だ捨てるぞ”って言って車の窓からコレ以外のもの全部入れてた袋をポイ捨てしましたよね」

「今は全く関係ないじゃん」

「…………」

「で、病院の名前は?」

「………。××病院です」

「で、野田小夜子さんが死ぬ前日に死んだ医者夫婦は何処の病院の先生?」

「同じ病院です。旦那さんが神経外科医で、お嫁さんが心臓のおいしゃさん」

「お嫁さんは外科か内科か?」

「さあ?」

「あんたなぁ………!」

「怒ってる場合ですか?」

「…………。実に気に入らん。何故私がこんな人と組んで調査しなきゃならんの」

「ボクも同感です」

「あら、気が合いますね」

「そうですね」

「で、確か宮崎ご夫婦でしたか」

「旦那さんがアイルランド人です」

「子供は?」

「一人居ます。名前は“宮崎クロエ”」

「可愛い名前ですね。その娘に会ってみましょう。行きますよ。―――――さっさとしろや」

「はいはい」

「はいは一回」

「うぃー」

「ほら、何時まで食べてんですか。しっかしよくこぼすなぁ………」

「パサパサです、このドーナツ」

「………相手変えて欲しいなぁ」

「同感です」

「あら、気が合いますね」

「そうですね」




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