僕の中の十字架
来たよ。
来ちゃったよ。
ノックもしないで部屋に侵入してきたのは間違えようもなくサエで、ベッドの頭上からぼくの顔を覗き込んでいる。
「何さ」
逆さまのサエの顔をじっっ………とりと睨みながら訊いた。
「いや、あの、――ひ〜〜むぁ〜〜だぁぁぁ!」
「あーハイハイ。揺らさないで解ったから」
暇な時が嫌いなんだろうな、コイツはよォ。
ベッドの枠を掴んでユサユサと揺らしてくる。脳が揺れるんだけど。
のっそりと上半身を起こし、サエを振り返って
「近い!」
のけぞった。
奴は一瞬でぼくの背後に正座していた。
何者!? ―――速っ!
そして
「うわっ、本気で近っ!」
サエものけぞった。
悪いのは、っていうか近付いたのはお前だろ。
「びっくりしたー! あははははー!」
「スカートで足開くな!」
足を開いてベッドの背枠にもたれたサエの膝をぴっちり閉じてやり、ベッドから床に降りた。
―――不純なぼくでした。
―――意味は想像に任せます。
「クロ?」
「ん?」
「なんで今、でんぐり返ししたの?」
「煩悩を打ち消す為に」
「何それ?」
「除夜の鐘で取り去るものさ」
「で、じょやのかねって何?」
「キリが無いから。何でそんな馬鹿で無知でいられるの」
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