僕の中の十字架
「さ、クロエちゃ……っ……クロエくんに、君に、訊きたいんだけど」
クロエちゃんと呼ばないで。
切に訴えたいが、ここは我慢だ。
頑張れぼく。
くじけるなぼく。
「何ですか?」
「クロ、目が怖い」
サエがボソッと言うのを聞き流した。
北村さんは優雅な笑みを作って見せた。
「君の両親が死んだ時の話、しようか」
「………」
大体予想はしてた。
ぼくの安直な考えでは、警察は事件事故を収束し、犯人を捕まえたり、事件の真相を求め奔走する。
そんな仕事だと思ってる。
ぼくの身の回りの事件といったら、父さんと母さんの事件と、野田さんの事件。
然し、あまり話したい事ではない。
なんで此処までストレートに聞けるんだ?
今まで、大人は無駄に気を遣う生き物だと思っていた。
子供なんだし、傷付けるのは気の毒とか、あまり難しい事は解らないだろうとか。
そう考えてるのが、もし「大人」なら、ぼくも大人ということになる。
でも子供だから。
大人達は子供に馬鹿にされてることに気付かない。
今まで見てきた大人は皆そうだった。
北村さんはぼくに対等な存在として接してくれている様だ。
富士原さんは、まあわざと心を開き易い、気じゃなく人を使って話を聞きやすくしてるんじゃなかろうか。
親しめる人間にほど悩みや辛いことを話せる。
富士原さんはそんな人だ―――――と、思いたい。
ぼくは、物心ついた頃から人間観察をしてきた。
人を見て心理やらを学ぶのは面白かったし、父さんも「まずは観察が大事なんだ」って言ってたし。
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