僕の中の十字架
「行ってらっさ―――……ぐぅ」
「こらこら、起きなさいよ、ほらー」
「い、いひゃいれすっ」
父さんの頬をつねって引っ張る母さんを後目に、ぼくはリビングから廊下に出た。
階段の踊り場の窓から丸くさしこんでくるヒ光に照らされながら登り、部屋に入った。
ランドセルを背負い、開け忘れていた南側のカーテンを開けた。
〈「くーろー!!」〉
「いっ!?」
先程着替えシーンを目撃してしまった奴が、自分の部屋の窓枠に器用に足を掛け、身を乗り出してぼくの部屋の窓をガンガン叩いている。
ちなみにミニスカ、パンツ丸出し。色気無し。
「こらー! 落ちたら死ぬほど痛いぞ!?」
〈「いーやー、宿題見せてやるって言うまで叩いたる!!」〉
月曜だぞ、今日は。
つまり、金曜に出た宿題をやる時間はまるまる二日もあったというのに。
「…………」
〈「くーろー」〉
ぼくは鍵を開けて窓を開けた。
「にゃ――っ」
「ぬぉあ!?」
このヴァカはぼくの部屋の窓に目一杯体重をかけていた。おかげで只今サエの下敷きだ。
馬乗り、マウントポジョン。騎乗位。そうともいう。
っていうか、朝食出そう。
「ぐぇ………」
「ははは……」
笑ってる場合か。
「下りろ」
「宿題」
「重いから下りろ」
「私って重い? そんなに重い? ねぇ?」
「ぐぅ………!! 軽い、軽いから、宿題も、見せ………ま……す」
《ガチャッ》
「「ん?」」
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