僕の中の十字架
少し屈んで人物の前髪をかきあげました。反応はありません。
上手に化粧された顔面の筋肉はこわばっていて、目は開きっぱなしです。
「……―――!」
そしてある事に気付き、手を退いて反射的に目をそらしました。
「富士原」
「うーい」
何も見ていない奴の軽く明るい口調が、妙に勘に障ります。
「呼ぼうか、警察。―――呼べ」
「何言ってんすか順子さん。ボクら警察でしょ」
「…………」
返ってきたのは沈黙でした。
何時もの「名前で呼ぶな」もありません。
流石に何かあったかと気になり、富士原さんは中に入って行きました。
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