僕の中の十字架
意外な質問だったのか、顔を上げてぼくを見つめてきた。
凄まじい眼力に、反射的に目をそらしそうになったが、グッと堪えた。
マリアナみたいに深くて暗い色合いの瞳に映る自分がよく見えた。
にしても、大きい目をしてるな。
まるで小動物のアレだ。アレってどれだか知らんが。
ボケーッとぼくを見つめるサエ。
っていうかさっさと答えろ!
「………クロ、あのさ」
「ん?」
「質問忘れた」
この女の子は物凄い事に、ぼくの質問を完全に失念なさったみたいだ。
恐らく、答えを探すうちに「あれ? 何に対する答えを探してたっけ」となったのだろう。
カマトトじゃないのがすげぇよ。
「えっと―――」
《ガチャッ》
「さて二人とも帰りますか」
「―――……」
邪魔が入った。
富士原さんが冷や汗まみれの顔で現れた。
「…………」
北村さんが無表情で現れた。