僕の中の十字架
思い出すだけで吐気を覚えます。
胸を刺されてたりしたわけではありませんから、正面から見た北村さんは、最初全く気付きませんでした。
しかし横に行けば、彼女の首の後ろに鋭いハサミが刺さっているのが見えたのです。
ハサミは的確に延髄に刺さっており、軽く刃を開かせてありました。
血液は首筋から背中、椅子の座面から床に落ち、紅い池を作っていました。
首筋にこびりついた血液が、北村さんの肝を冷やしました。
フローリングのワックスのせいか、流れた血液は冷たくなってるだけで、染み込んではいませんでした。
北村さん達が発見する二日前に死んだとされ、涼しい時期故か、さほど目立つ腐敗はなかったそうです。
酷いです。
誰かに殺されたのは間違い有りませんが、何者かと争った形跡も手掛りも無く、それが北村さんの胸に空恐ろしさを残しています。
「……………」
おえー。っとね。
思い出すだけで、夕食を全て外界へ御返ししてしまうくらい気分の悪い光景でした。
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