僕の中の十字架
「はい、みんな。今日は好きなものを描いてねー」
『はーい』
「うーぃ」
はぁ……。
今日の最後の授業は図工だ。
しかも、絵を自由に描けときた。
如何せん、ぼくにはそんなセンスは全く無し。
大変だ。
と、いうことで。
とりあえず、何にも考えずに絵の具で描いて描いて………描い……て……。
「…………」
隣の席の子がぼくの絵を覗きこんで
「…………」
見なかった振りで作業に戻る。
そんなに酷いのかよ。
まぁ、いいけど。
うん、授業で、しょうがなしに描いたんだし。
だから、別に………
………。
………。
………。
ショックなんかじゃ、ないさ。
「…………」
通りかかった先生も、見なかった振り。
……先生の正直者。
いや、誉めてない。
先生なんだし、社交辞令くらい言える人になろうよ。
はぁ……。
確かに下手だけど。
確かにかなり下手だけど。
これ以上やっても無駄だな。
筆を置いて、目の前の作品とも呼べない代物を眺めた。
ケバケバしい。
一応、花のつもりだけど。
ひまわりの。
…………。
は、ははは………。
げ、原色だけだったのがいけなかったかなぁ………?
ぼくが、どうにかなった時のピカソだったら、絶対コレは芸術と呼ばれただろうが、ぼくは正常な11歳の少年だから、コレは只の下手な絵だ。
訂正、只の“凄く”下手な絵だ。
…………。
自分で言ってて悲しい。
.