僕の中の十字架
かなり車をとばしているのでしょうか、心無しか今〈キキーッ!〉って、ドリフトしたっぽい音が聞こえた気がします。
奴は深夜の公道で何をやってんでしょうかね。
「ここら辺にキャバクラは無いぞ」
『失礼な。純粋にお宅訪問ですよ』
「夜中の三時だぞ」
『別に死ぬわけじゃないっしょ』
「まあ、そうだが……」
死ぬ死なないの物差しで考えないで欲しいですがね。
因みに、富士原さんが北村さんにやらしい事するのが目的だったとしても、北村さんが本気で嫌なら多分彼を殺しますから。
『じゃあ、もうすぐ着くんで、服着てないなら着て下さい。―――604でしたよね』
「そうだが、服くらい着とるわ。お前みたいな変態の頭の中では日本の女が裸で生活するという思考があるのか? それともお前の妄想か?」
北村さんのツッコミも聴かず、富士原さんは一方的に通話終了しました。
そういえば、少し前に運転中の携帯での通話が道路交通法違反対象になりましたね。
曲がり成りにも警察である奴が何てことを。
北村さんはしばらくそのことについて考えましたが、なんか面倒になったので止めました。
見付かんなきゃいいか、なんて警察らしからぬ事まで宣いました。
さて、奴が来るなれば先ずはこのパジャマ(デフォルメされまくったウサギ柄)を着替えなくては。
北村さんは梯を降りてクローゼットを開けると、適当な服に着替えました。
自分で選んで買ったパジャマを奥に突っ込み、これでオッケー。
……隠すくらいなら買うな着るな。
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