僕の中の十字架
時刻はあと20分位で4時になるという時分。
「やっぱし……」
「ん?」
富士原さんは、顔を上げて見てくる北村さんを見、テーブルの上の彼女の右手の上に自分の右手を乗せました。
「!?」
いきなりの事に反応が遅れ、北村さんは手を振り払うタイミングを逃しました。
ちょっくら顔を赤らめて、
「な、なんだよ」
おちょぼ口で言いました。
彼女、実は人生初です。男性に手を触られるのが。
富士原さんは、北村さんに顔を近付けてきました。
「ふわ―――!?」
北村さん、ユデダコみたいです。
忘れられた野田さんのハサミの刃に、二人の姿が映っています。
や、やはりキスでしょうか………?
が、
「………?」
はじめは真顔だった富士原さんの顔が、近付くにつれ少しずつ、子犬の様に悲しげな表情になり、
「おなか、すいた」
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