ラブストーリーを一緒に
Love.1

不良作家

…いつだってそう。


ふとしたワガママと気まぐれで、わたしを動かそうとするんだから。


「…娘を、なんだとおもってるんだろ」


重箱が入った紙袋が手に食い込むのと、痺れるような空気の冷たさに涙が滲む。


指定されたマンションの前に到着すると、わたしはかじかむ手をなんとか駆使して目的の人物に電話をかけた。


『さぁ子?もう着いたの?』


いつもはなかなか繋がらないくせに、今回ばっかりはやけに出るのが早い。


急いでって言ったじゃん!


…って言うだけ無駄だから、やめておいた。


「頼まれたもの持ってきたけど?」


そう言って見上げたマンションは、コンクリートで打ち固められた、いわゆるデザイナーズマンションのように見える。


…この近辺って高級住宅街だし、こんなお洒落なマンションじゃ家賃とかもすごいんだろうな…。


なんて、庶民まるだしの感想が浮かんできたけど、


なんにしろ、さっさと荷物を渡して帰りたいわたしには関係ないことだって思っていた。


…次の言葉を聞くまでは。
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