ラブストーリーを一緒に
「…お母さん…お願いだから一緒に謝って」


あまりにいたたまれなくて、くいくいと母親の袖を引っ張ってみたけど、むしろ逆効果だったみたいで。


「わたしはむしろ感謝されてもいいくらいでしょ?小説に出てくる家庭の味が掴めないっていうから、わざわざ用意してきたのに」


ん…?


家庭の味…?


不審に思って横顔を見つめてみるけど、母親は気付かずにまくしたてる。


「風邪っぽいから締め切り延ばしてくれって言ってたわりに、お風呂上がりに裸でウロチョロしてるから―――」


「ちょ、ちょっと待って、家庭の味って、ひょっとしてコレ…!?」


忘れ去られていた重箱いっぱいの筑前煮を掲げて見せると、あっけらかんとした答えが返ってきた。


「あ、そうそう、ソレ」


「用意してきたのわたしぢゃん!!!」
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